ストレスがカタチを持って現れる。
ワイドショーのコメンテーター
「2ヶ月半も緊急事態宣言が続いたのに、政府は何も対策できてない!」
カタチを伴ったストレスは巡る。
麻生副総理
「いつまでやるの?
マスクはいつまでやることになってるのか、記者なら知っているだろう」
ストレス、怒り、憤懣。
その連鎖を考えたとき、中学時代の教師のことを思いだした。
――20年ほど前、中学3年のある昼休み
私は友だちと校庭でバスケットボールをしていた。
一つのゴールで1 on 1に興じる。
楽しい昼休みはあっと言う間に過ぎ、終了のチャイムが鳴る。
5時間目は、全校生徒が体育館に集まっての全校合唱。
だが、チャイムが鳴っても私と友だちはバスケをやめなかった。
一方がゴールを決めたら、もう一方が「ラスト!もう1本!」と言う。
二人とも、最後は自分がゴールを決めて気持ち良く終わりたいがために。
再び、チャイムが鳴る。
5時間目の始まりの合図。
私と友人はようやくバスケをやめる。
急いで下駄箱に行き、上履きに履き替え、体育館までダッシュ。
時は遅く……体育館にはすでに全校生徒が集まっていた。
「おいっ!」
体育館の入口。
息をきる私と友だちの前に、一人の教師が現れた。
「お前ら、何やってたんだ!遅えぞ!!」
別の学年で担任を務める、体育教師の男。
「何やってたんだって、聞いてんだよ!」
体育教師は、私と友だちにヒザ蹴りをかましてきた。
(あれ?ちょっと遅れたくらいなんだけど。めっちゃ怒ってる)
怒髪天を衝く体育教師。
その頭は、ハゲ散らかしていた。
パフォーマンス的な意味合いもあったのかもしれない。
全校生徒や他の教師たちがいる場所で、ルールを破った生徒を取り締まる。
それにしても、遅れた理由を聞く前からすでに、体育教師は完全に沸点を越えていた。
(絶対に私たちがいけないんだが)
私と友だち「えっと、あの、バスケやってて……スミマセンでした」
体育教師「あん!ふざけんなよ!いいからさっさと入って並べ!」
もう一度ヒザ蹴りをかまされつつ、解放された私と友だちは全校合唱に加わった。
――それから一年後。
その体育教師が書類送検だか逮捕だかされた。
盗撮で。
学校内ではなく、街なか。
エスカレーターとかで日常的に盗撮を繰り返していたらしい。
私は中学を卒業し、高校に進学していたが、同じ中学の人たちとはちょっとした話題になった。
●●先生が盗撮で捕まったらしい、と。
自分の担任や部活の顧問の先生でなくて良かった。
そう安堵しつつ、私はその教師にヒザ蹴りされて怒られた日を思いだしていた。
盗撮で捕まるような奴に、怒られる筋合いなんかねえ!と。
あの教師は、どうしてそんなことをしてしまったのだろう。
・生来の性癖
・職場や家庭でのストレス
・ケータイカメラなど技術の向上
色んな要素が混ざりあって、そうなってしまったのかもしれない。
全校合唱に遅れた私たちに怒り心頭でヒザ蹴りをかましてきた教師。
私と友だちの行為が、教師が道を外す引き金になったとは思わない。
もしかしたら要因の一つかもしれないし、全く関係ないだろうとも思う。
あの教師は並大抵でないストレスを抱えていたのだろうか。
そのストレスの捌け口は、異性の下着を盗み撮ることに向かってしまった?
(世の中には下着の盗み見や盗撮に走らない人が大半で、仮にそうした欲求があっても盗撮モノのAVとかで何とか我慢している人もいるだろう。そして、盗撮をしてしまう者もいる)
――罪を犯した教師にヒザ蹴りをかまされたこと。
20年ちかく経った今ではもう、そんなことどうでもいい。
ストレス、怒り、憤懣。
その連鎖を考える。
(ストレスが生まれない社会ってのは、たぶん無理だと思う)
「6秒待つ」
アンガーマネジメントでよく言われる。
怒りの制御。
キレないために6秒間待つ、と。
ストレス、怒り、憤懣。
時間が経過することでしか、それらを消すことはできないのだろうか。
かつて目の前で憤りを見せた体育教師。
「先生、他に道はなかったんですか?」
そう問わずにはいられない。