1都3県の緊急事態宣言が解除されました。
二度目の緊急事態宣言は、長かった。
解除後の緩みに注意するよう――政府や昨日の『コボちゃん』が訴えていました。
一度目の緊急事態宣言のとき。
仕事の会議は全て、リモート会議になりました。
私はZoom会議が、苦手です。
リモート会議は苦手ではありません。
Zoomが苦手。
苦手なのは、使い慣れておらずよく分かっていないからです。
――2020年6月某日
仕事でZoom会議がありました。
私にとって初めてのZoom会議。
Zoomを使用すること自体が初めてでした。
リモート会議は初めてではありませんでした。
4月以降、週一回のペースで参加していました。
社内のメンバーだけで行う、Google meetでのリモート会議。
Googleのスケジュールにある会議の予定、そこからワンクリックで簡単に入れるのがGoogle meetです。
今回のZoom会議は、担当するお客様とのリモート会議。
4月・5月と毎月の定例会議ができておらず、お客様からリモート会議のご要望をいただきました。
「Zoomにしてほしい」とのこと。
「今度Zoomで会議あるんですけど、Zoomってどうですか?
何か事前の登録とか必要なんですかね?」
Zoom未経験の私は周囲の人たちから話を聞きました。
「別に。他のリモートとそんなに変わらないよ」
「相手から招待のURL来るから、それをクリックするだけ」
「事前の登録は、特に必要なかった気がする」
Google meetとそれほど変わらなそう。
そう思いつつ、顧客とのZoom会議の日を迎えました。
会議は14時から。
私は職場の地下へ。
誰もいないモニタールーム※という部屋に行き、ノートパソコンとWi-Fiのルーターをセットします。
※小中学校の視聴覚室みたいな部屋をイメージしてください
●13時45分
Zoom会議の準備は万端。
お客様から届いたZoomの招待メールを開く。
あまり早く入ってもと思い、少し待つことにします。
●13時55分
そろそろZoomに入ろう。
招待メールにあるZoomのURLをクリックしました。
すると、英語のメッセージが表示されました。
ん?
あれ?
私は困惑してしまいました。
招待メールのURLをクリックすれば、すぐにリモート会議の画面が出てくると思っていたからです。
「マジかよ!これ、登録だかログイン要るじゃん!」
モニタールームの中心で、Zoomに入れないことを嘆きました。
(部屋には私一人しかおらず、それが混乱と焦りに拍車をかけていきます)
お客様とのリモート会議まで、時間がありません。
氏名やメールアドレスを入力して、Zoomの設定をしていきます。
●13時59分
目の前のノートパソコンには、長閑な自然の風景がいくつも広がっていました。
【山と丘に関する写真を選んでください】
えっと、これは山だよな。
で、これ、これは……丘か?
丘って、なんなんだよ!わかんねえよ!
リモート会議の開始まで、あと1分。
焦りに焦りながら、自分がロボットではないことを証明するため、PCに表示された写真から山と丘を判別しました。
お客様との会議には間に合うはずもありません。
●14時05分
Zoom会議はすでに始まっていました。
(私は偉くも重要な役職でもないため、会議は私がいなくても進んでいました)
PCのカメラに向けて何度も頭を下げ、お客様に謝りました。
会議に遅れた私に対し、他の皆さんの顔が頷きます。
怒られないでよかった。
私はホッとしました。
●14時25分
円滑に進んだ会議が終わりました。
「あ、サトーさん。このままZoomで残ってもらっていいですか?」
お客様(偉い方)からそう言われました。
他の人たちがZoomを退室していき、顧客の偉い方と私だけになりました。
偉い方「最近、〇〇なんだけど、サトーさん、どう思いますか?」
お客様からの問いかけ。
私「ご意見ありがとうございます。そちらに関しては、ですね……」
私が話していると、お客様の反応がおかしいことに気がつく。
耳に手をあてて、その後に×印を出す。
ん?
聞こえてないのかな?
私「ご意見ありがとうございます。あの、ですね……」
お客様の手を交差した×印は……消えない。
マイクの不調、かな?
(会議に遅れた後ろめたさもあり、私は会議中に一度も発言していませんでした)
マイクの設定、できてないじゃん!
そのときでした。
Zoomの画面が固まりました。
え? マジかよ!
どうして!? Wi-Fi順調だったのに。
Wi-Fiのモバイルルーターを手にとった私は、唖然としました。
「充電が、切れてやがる……」
全身に悪寒。
PCでは、手でバッテンをつくったままのお客様が停止しています。
ヤバい。ヤバい。ヤバい。
少し口を開けたまま、茫然としてしまいました。
「……そっか。電話か」
会社から貸与されたiPhoneをポケットから取り出す。
モニタールームは地下なので、電波が届かず電話がかけられませんでした。
ツイてないときは、とことんツイてないものです。
地下から地上に駆け上がり、お客様に電話をかけました。
Zoom画面から突如消えたバカ者による謝罪。
怒らずに許してくださるお客様に感謝するしかありませんでした。
私「それで、あの、先ほど仰っていた件なんですけど……」
偉い方「ああ、あれね。あれは……もういいや、サトーさん」
(ああ、何か言いたかっただろうに、自分のせいでタイミングを失わせてしまった……)
お客様の信頼を損ねてしまったかもしれない。
Zoomにうまく入れなかった自分。
モニタールームに置かれた、充電の切れたWi-Fiルーター。
緊急事態がもたらした新しい様式に対応できず、歯がゆい思いをした一日でした。