『タイガー&ドラゴン』は、今から16年前にTBSで放送されたドラマです。
脚本:宮藤官九郎×主演:長瀬智也のゴールデンコンビによる名作ドラマ。
出演者を見ると、V6の岡田准一や西田敏行、阿部サダヲや笑福亭鶴瓶など、超豪華。
今や大人気の星野源や松本まりかも、出演していました。
放送当時も見ていましたが(ちょうど私は大学受験~入学くらいのころでした)、昨年末に一挙放送されていたのを録画して再見。
やっぱり面白い!ということで、感想を書いてみます。
ちなみにドラマ『タイガー&ドラゴン』は、まず単発のスペシャル版、3ヶ月後に全11回の連続ドラマとして放送されました。
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「えっ?『昨日のスペシャル版の感想記事と同じこと書いてるじゃねえか!寿限無じゃねえんだから、同じことループしてんじゃねえよ!』って?」
「お客様、鋭い!そうなんですよ。
『タイガー&ドラゴン』の連続ドラマ第1話の冒頭には、林屋亭に弟子入りした虎児(長瀬智也)が寿限無でループしちゃってるシーンがあります」
「でも、第1話でベースになる落語の噺は、『芝浜』なんですけどね」
第1話 あらすじ
今回、虎児が師匠の林屋亭どん兵衛(西田敏行)から教わる落語は「芝浜」。
「古典落語には現代のリアリティがない」と感じる虎児は、ヤクザの弟分である銀次郎(塚本高史)とリサ(蒼井優)の二人が出会った話を、自身の芝浜として演じます。
登場人物
■中谷銀次郎(塚本高史)
ヤクザである新宿竜星会の組長(笑福亭鶴瓶)の息子。
組では”坊ちゃん”と呼ばれる。
組長の二代目として経験を積むため、虎児の舎弟としてヤクザ修行中。
竜二(岡田准一)とは幼馴染。
■リサ(蒼井優)
竜二が裏原宿で営む洋服店「ドラゴンソーダ」のアルバイト。
彼氏ができると生活や性格まで変わるタイプ。酒好き。
ドラゴンソーダの売り上げが乏しいため、給料は3ヶ月分もらえていない。
銀次郎の財布を拾って警察に届けた際、銀次郎と出会い恋に落ちる。
芝浜について
芝浜は昔の魚卸売り市場。
酒好きの勝五郎と、酒好きの亭主を立ち直らせたい女房の人情噺。
酒ばかり飲んでもう二十日も仕事をしていない亭主の勝五郎を女房が起こしている。
今日こそは仕事場へ行かせようと、女房は必死。
面倒くせえとブツブツ言いながらも家を出た勝五郎。
しかも、女房が早く起こし過ぎたせいで、芝浜ではまだ一軒の問屋も開いていない。
帰るのも面倒な勝五郎は浜に出てタバコを一服。
ふと下を見ると水でふくらんだ川の財布が落ちている。
財布にはなんと四十二両もの大金が入っていた。
大あわてで家に帰った勝五郎。
大金を手にして、すっかり気が大きくなってしまい、もう商売なんか行かなくってもと、仲間を集めて酒を飲みまくり、酔って寝てしまった。
翌朝。
前日と同じように勝五郎を起こす女房。
起こされた勝五郎は昨日拾った金のことを思いだすが、女房は夢を見たのだと言ってゆずらない。
女房「昨日は芝浜へも行っていないし、財布など見たこともない。逆に貧乏ばかりしているから情けない夢を見てしまうのさ」
女房にさとされ、そんな夢を見るようではおしまいだと反省した勝五郎。
酒をぷっつりとやめ、商売一本でがんばる。
今まで怠けていた勝五郎だが、もともとは腕のいい魚屋で、それから三年後には小さな店を出し、若い衆を二、三人置くまでに商売を繁盛させた。
そして大晦日。
除夜の鐘を聞きながら勝五郎と女房が昔の苦労話をしていると、女房が四十二両の入った革の財布を取り出した。
女房「夢じゃなかったんだよ、お前さん」
勝五郎「しかし、あのときおめえは夢だと……」
女房によると、あのまま酒びたりが続き、拾った金を使ったことがバレたら罪にも問われかねない。
大家さんと相談し、金は奉行所に届けでて夢という話にしたという。
金は落とし主が出ず戻ってきたが、それでも女房は心を鬼にして今日まで黙っていた。
ここでサゲ(噺の落ち)。
女房「もう酒を飲んでもだいじょうぶと思って……」
これを聞いた勝五郎は、涙を流して女房に礼を言う。
ほっとした女房が酒を出すと、うれしそうに口まで運んでやめてしまった。
勝五郎「ありがてえんだがなあ、やっぱりよそう。また夢になるといけねえ」
※参考文献『古典落語100席』選・監修者:立川志の輔(PHP文庫)
タイガー&ドラゴンの芝浜
こちらについてはここで書かずに、DVDやParavi(パラビ)などのサイトで実際に視聴していただきたく存じます。
決して、文章を書き疲れたからじゃあ、ございませんからね。
ドラマの中では、酒好きのリサ(蒼井優)が酔っぱらったときに銀次郎(塚本高史)に出会ったことが、芝浜の”夢”として描かれます。
スペシャル版から連ドラ版になって、銀次郎がキャラ変したような気がします。
(というか、スペシャル版ではまだキャラが固まっていなかった、が正しいかもしれません)
メグミ(伊東美咲)のバスガイド目当てにハトバス通いを続けていた銀次郎。
鳩のように女を追いかける銀次郎・兄弟子たちに囲まれてまるで鳩の虎児。
「これが鳩」だと虎児が言うシーンなんか何気ないですが、一連の流れやセリフの際立ちは、素晴らしいと思います。
虎児は古典落語を自分の噺として演じるため、自分が遭遇した現実や事実を落語という、物語にしていきます。
第1話では、人から人へ物が渡るのが印象的です。
銀次郎の財布・金・ドラゴンソーダの給料・虎児とどん兵衛の10万円・竜二がデザインした洋服……
夢ではなく、現実に在る物が渡る。
そうして、一つの”物語”が生まれているようです。