――でさあ、そしたら出てきたんですよ。
森下愛子が。
テレビの画面に出てきたんです。
ああ、誰かクドカンのドラマにおける森下愛子・薬師丸ひろ子・小泉今日子について、語ってくれないかな。
『3人の”子” ~クドカンドラマの女神モイラ~』なんてタイトルでさ。
タイガー&ドラゴン第4話は「夫婦って何だよ?」のお話です。
第4話 あらすじ
今回は虎児(長瀬智也)の師匠であるどん兵衛(西田敏行)と組長(笑福亭鶴瓶)のお話。
大学時代からの親友であるどん兵衛と組長は落語研究会に所属していました。
そんな落語研究会に入ってきた後輩の小春ちゃん(森下愛子)。
どん兵衛と組長は二人とも小春ちゃんを好きになってしまい、その関係は……。
やがて時が経ち……
どん兵衛は小百合(銀粉蝶)と結婚。
組長も小春ちゃんとは別の女性と結婚しましたが、妻が亡くなって独り身。
小春ちゃんはスナックで働く独身のまま(ママ)。
今でもどん兵衛は時々、スナックに行って小春ちゃんと会っているらしい。
一方の組長は、かつて好きだったからこそ小春ちゃんに会うことを今まで避けていました。
そんな中、落語研究会のOB会が開かれることとなります。
かつて好きだった小春ちゃんに今も想いを寄せる組長の恋心はどうなるのか。
権助提灯の古典落語とともに、それぞれの想いは行ったり来たり。
登場人物
■林屋亭どん兵衛(西田敏行)
虎児の師匠。
本名は谷中正吉。
組長とは大学時代からの友人で、400万円(-今までの虎児への落語授業料)の借金がある。
■組長(笑福亭鶴瓶)
虎児のいる新宿竜星会の組長。
本名は中谷謙。ゴルフ好き。
大学時代は落語研究会に所属していて実力もあった。
3年前に妻を亡くし、小春のことが今も忘れられない。
■水越小春(森下愛子)
スナックのママ。独身。
どん兵衛と組長が入っていた落語研究会のマドンナ。
権助提灯について
大店の旦那が別宅へ妾(女房以外の女性)を囲った。
普通なら本妻が嫌味を言って、夫婦仲が悪くなるものだが、焼き餅が大嫌いという女房だから、いっこうに気にかけない様子。
また妾のほうも話のわかった女で、ことあるごとに本妻を立て、わがままをいわない。
波風を立てず、実に円満にくらしている。
暮れも迫ったある晩のこと。
遅くまでの仕事を終えた旦那が寝ようとすると、女房がこう言う。
女房「今夜は風がとても強くて火事があるかもしれない。
もし火事になっても、この家には若い者がたくさんいるから心配ない。
しかし、別宅は妾と女中の二人きり。
不安に思っているだろうから、今からいって泊まってやりなさい」
これに旦那は「わかった。お前がそれほど言うのなら」と出かけることにします。
夜更けなので誰かに提灯を持たせて供にすることとなりますが、あいにく田舎者で気のきかない権助しか起きていなかったので、仕方なく権助に供を命じます。
ほどなく妾の家に着いた旦那。
ところが妾は「ありがたいが泊まってはもらえない」と言います。
好意に甘えて旦那を泊めたら、ものを知らない女だと言われ、奥さんに合わせる顔がないという理由で。
仕方なく家に戻ろうと、旦那はまた権助に提灯をつけさせる。
権助が、女に嫌われただの、宿なしになりそうだの言うから、旦那はすっかり不貞腐れてしまった。
家に戻ると、女房が困った顔をした。
妾の心配りはとても立派、でもこのままではしめしがつかない。
妾「どうぞ今夜は別宅へ」
げんなりした旦那は権助に「提灯だ」
権助「あはは、まだ消していません」
もう一度、妾の家へ。
旦那と権助は歩き疲れてクタクタ。
でも、妾は申しわけなさそうに言う。
妾「そうおっしゃられると、かえってお泊めしにくくなりました」
ここでサゲ(噺の落ち)。
歩き疲れてクタクタの旦那は半ベソをかいていう。
旦那「権助、提灯を」
権助「いや、もういらねえ」
旦那「どうしてだ」
権助「もう夜が明けました」
※参考文献『古典落語100席』選・監修者:立川志の輔(PHP文庫)
タイガー&ドラゴンの権助提灯
こちらについてはここで書かずに、DVDやParavi(パラビ)などのサイトで実際に視聴していただきたく存じます。
決して、文章を書き疲れたからじゃあ、ございませんからね。
タイガー&ドラゴン第4話では、権助提灯の権助の役を、虎児・銀次郎(塚本高史)・竜二(岡田准一)の3人が演じています。
第4話のストーリーにはあまり関係ありませんが、ジャンプ亭ジャンプ(荒川良々)はクラブで寄席をしています。
(しかも、そのクラブ寄席で阿部サダヲが演じるどん太はバイトをしています)
天涯孤独の身だった虎児を拾って育ててくれた新宿竜星会。
組長が落語をできることを知った虎児は、大きなショックを受けます。
「なら、林屋亭どん兵衛に弟子入りする必要なかった」と。
すでに起きた出来事を変えることは、できません。
虎児がどん兵衛に弟子入りしたことも。
どん兵衛と組長がかつて小春を好きで、二人ともきちんと想いを伝えられなかったことも。
人は自分の境遇や状況、過去の積み重ねがあって、生きています。
「古典落語は人間を知らなきゃできない」
どん兵衛が虎児へ言ったセリフの重みが、ドラマを見る私の積み重ねになったなら。
権助は夜が明けるまで、供を続けます。
中谷中