寿三郎(西田敏行)の体力が衰えていきます。
認知症も進行していく。
認知症は以前、痴呆症と呼ばれていました。
その前は「ボケた」などと言っていたと思います。
昔の呼び方が何だったか、忘れてしまいそうです。
『俺の家の話』第八話。
自分が要支援2※だと思っている寿三郎は「シューカツする」と言います。
※要支援と要介護の違い
要支援:日常生活は自分で行えるが、多少の支援が必要な状態
要介護:自分一人で日常生活を送ることが難しく、誰かの介護が必定な状態
参考URL「LIFULL 介護」
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/youshienyoukaigo/
ただいま無職の私には耳の痛い言葉ですが、寿三郎のシューカツは終わるほうの活動です。
終活。
自分の人生を終えるための活動です。
前回、リング上でさくら(戸田恵梨香)にプロポーズした寿一(長瀬智也)。
試合後にさくらを山賊抱っこした際、足をケガしてしまいます。
アキレス腱をケガした寿一は車イス生活となります。
寿三郎と寿一、二つの車イスが観山家の中に。
激しいプロレスの試合後に、浮かれてさくらを山賊抱っこしてケガをした寿一。
疲労時の身体に急な負荷をかけてはいけない。
プロレスラーの寿一が知らないわけはありません。
一度知ったことや学んだことを、人は忘れてしまいます。
サザエさんなんて、買物しようと街まで出かけたのに、財布を忘れています。
また、嫌なことや悲しい出来事、恨みつらみなどを忘れる※機能がなかったら、人はきっとおかしくなってしまいます。
(※忘れるというのが過剰な言い方でしたら「薄れさせる」とかでも構いません)
二つの車イスがある観山家から、少しずつ人が去っていきます。
寿一とさくらが好き合ってることを知った踊介(永山絢斗)。
→想い人と両想いになれることなど少ないと知っているはずなのに、忘れてしまっている。
夫O.S.D(ロバート秋山)の浮気を知った、長女の舞(江口のりこ)。
寿三郎の好色ぶりの反面、泣いてる母親を見てきた観山家の女性は怒りを吐きだして去ります。
→(観山家の)男どもが馬鹿でエロな生き物だと知っているはずなのに、忘れてしまっている。
「寿限無(桐谷健太)とは風呂に入りたくない。何か違うんだよ」
寿三郎の呟きを聞いてしまった寿限無も観山家を去ります。
→宗家(西田敏行)の人間性は知っているはずなのに、忘れてしまっている。
(観山家での自分の立ち位置が揺らいでいる寿限無は、とても歯がゆい思いを抱いているはずです)
寿三郎の認知症が進行していきます。
「隅田川」という能の内容を忘れてしまうほどに。
そしてある夜、観山家から寿三郎がいなくなります。
徘徊!?
寿一たちは必死になって寿三郎を捜索します。
スマホのGPS機能で寿三郎のいる場所がわかりました。
隅田川。
忘れてしまった能の演目の場所です。
隅田川のほとりで「隅田川」を諳んじる寿三郎。
なんと、忘れたはずの「隅田川」を思い出していました。
川の流れを変えることはできません。
人は色々なことを忘れて生きています。
でも、折に触れてそれを思い出します。
忘れては思いだす――それを繰り返して生きています。
寿三郎の体力が衰えていきます。
朝食の梅干しを箸でつかめないほどに。
寿三郎をグループホームに入れてはどうか。
介護支援を担当する末広さん(荒川良々)からアドバイスを受けていた寿一。
二人きりの朝食で、寿一は寿三郎にグループホームの提案をしてみます。
寿一らしい実直さと父親を重んじる言葉を選んで伝えます。
グループホームに入った寿三郎。
「はやく行けよ」
息子が出ていくのを見送り続ける寿三郎の視線とそれを背中で受け続ける寿一。
言葉にはできない、様々な想いが詰まった、とても良いシーンでした。
そして。
秀生(羽村仁成)の親権についてリモートで話し合っているとき。
秀生の母(平岩紙)が産気づきました。
寿一が病院の廊下で見守るなか、秀生に妹が誕生しました。
観山家から去っていった人たちは戻ってくるのか?
寿一は秀生の妹や元妻とどう関わっていくのか?
来週も見逃せない展開を期待してます!
★☆★
寿三郎役の西田敏行さんの演技が凄すぎます。
西田敏行さんが素晴らしい俳優なのは当然なんですが、忘れていました。で、第八話でようやく思い出しました。
現世を生きながら、死が迫っている寿三郎。
認知症が進行している、という設定も相まって、彼のセリフや視線の一つ一つが深みを帯びています。
軽薄なセリフとか、エロいトランプを受けとるシーンとかでも。
(第八話にしてようやく西田敏行さんの演技に触れるのは、サッカー中継の後半に試合がちょっと停滞したころ、解説の人が急にボランチやアンカーのポジションにいる選手――日本代表だと遠藤航選手とか――をホメだすのに似ているような気がしました。
目立たないけど良い働きをしている人、いぶし銀な人に言及し始める。みたいな感じです。
前半・第一話からずっと活躍していたことに、ようやく気がつきました)