以下、過去の記述より。
カッコ内は私が見た日付です。
鳥
(2011/5/4)
The Birds
鳥についての作品をつくろうなんて考えるか? 圧倒的な数の鳥。鳥。トリ。
ゾンビも呪いもないのに、圧倒的な恐怖が提示される。
人間からしたら単体ではちっぽけな存在である鳥が大群となって襲いかかってくると、なすすべがなくなってしまう。
鳥を大量に出しつつ、人間関係もしっかり描かれている。
ダイヤルMを廻せ!
(2012/12/9)
巨匠によるあまりにも有名な作品。
ストーリー、ミステリーとしての展開が面白いのは勿論、役者の衣装や家具などの色彩が良いのと、電話・カバン・コート(ハット)等々、物の配置や見せ方が絶妙。
完全犯罪を企てる主人公が優雅で悪役っぽくないのも良い。
事件の真相を次々と明かしていく警部、驚異的推理力!
北北西に進路を取れ
(2012/12/16)
ヒッチコック監督の命令タイトルシリーズ(と勝手に呼ぶ)。
架空のスパイに間違われ、いきなり命を狙われ殺人犯となってしまう主人公ソーンヒル(ケーリー・グラント)。
最初、村上春樹の小説のようとも思ったが(主人公が巻きこまれる感じが)、ヒッチコック監督は明確なストーリーを示す。
広い畑でソーンヒルが小型飛行機に襲われ続けるシーンが好き。
窮地に追いこまれた歴代大統領モニュメントのラストシーン――から、まさか最後に寝台列車を映すとは、面白い。
トパーズ
(2013/1/13)
キューバ危機、登場人物たちはスパイや亡命者、政府高官ばかり。ほとんどの人物が、裏の顔(真の姿)を持つ。
決定的なシーンでの耳打ちのアップ、服装や物の配置、愛する者を射殺した後に床にひろがる紫のドレス、時間をおいて流れていく血などなど、美しさや効果のあるシーンが多数。
また、冒頭の少女と追跡者や通りの反対側のシーンでの台詞なしの場面も良い。
ハリーの災難
(2013/1/18)
コントのような色合いが強かった。
タイトルにあるハリーは冒頭で殺され、死体となって蹴られ踏まれ、”何度も”埋められ(掘りかえされ)、誰も彼の死を悲しまず(そもそも登場人物の大半は彼が何者か知らない)、と”災難”ばかり。
ハリーにとって最も災難なことは、この作品の間ずうっとdead bodyであること。
逃走迷路
(2013/1/20)
サボタージュ(破壊活動)の容疑をかけられた主人公バリー(ロバート・カミングス)の逃亡劇。
逃走中、バリーを匿うサーカスの面々に感動。ヒゲ女、ガイ骨男、くっついた双生児。(サーカスの長はどうしていつもどの作品でも小男なのだろう?)
ラスト、バリーと真犯人フライ(ノーマン・ロイド)の”崖っぷち”のやりとりを、フランスから来た自由の女神でやるのが凄え。
裏窓
(2013/1/31)
向かい合うアパートメント、足を骨折している主人公ジェフ(ジェームズ・ステュアート)はイスに座したまま向かいの窓群(←そんな言葉はない)を眺めている。
窓の内の一つに、ジェフは異変を感じとる。
イスに座ったまま全てを解決してしまう探偵もの、のようでもある。
窓を通してグラマーな女やベランダに寝る夫婦、「ピアノパーティー」する人々を眺めているが、ジェフの住居もまた彼/彼女らの窓を通して見られる対象でもある。
グレース・ケリーはBeautiful。
引き裂かれたカーテン
(2013/2/11)
原題は『Torn Curtain』。
時代背景や細かな人間関係をつかみそこね(理解できず?)、イマイチ楽しむことができなかった。
スパイとか亡命のお話。
主人公と女が人を殺めた直後、死体とバイクを”埋める”ことを、女が無言でシャベルをかいて表現するカットがなんか良かった。
めまい
(2013/2/17)
原題は『Vertigo』。
高所恐怖症のせいで警官を辞めた主人公スコティ(ジェームズ・ステュアート)。ぶらぶらしていた彼へ、旧友から探偵依頼が入る。旧友の妻を調べる主人公、やがて彼は彼女に恋する。
が、彼の恋や行動、想いは全て「仕組まれたもの」だった――。
スコティが見る悪夢のシーンが良い。フィルムに色をつけたり、アニメーションを入れたりで。
ロープ
(2013/2/28)
友人の殺害を完全犯罪に仕立てようとする二人の男。と、彼らの恩師であり作品終盤に二人の男の悪事を暴く男。
冒頭で絞殺される男が納められたチェスト、殺害に使用されたロープ、ピアノ、本などなど全てのアイテムが効果的。
作品は終始1セットで展開されるが、セットを最大限に活かす内容であり、且つ物語を最大限に活かすセットとなっている。
あらゆるショットが緻密で、殺人現場となり「現在も」被害者(デイヴィッド)が”眠る”部屋で交わされる言葉は二重三重の意味を帯びている。