俳優業・監督業ともに超一流の人と言えば、クリント・イーストウッドは無二の人だと思います。
※『ダーティ・ハリー』シリーズの感想は別に書いています
https://www.mrsugarblog.com/%e3%80%90%e6%98%a0%e7%94%bb%e3%80%91%e3%80%8e%e3%83%80%e3%83%bc%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%bc%e3%83%8f%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%80%8f%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%ba-%e6%84%9f%e6%83%b3/
以下、過去の記述より。
カッコ内は私が見た日付です。
グラン・トリノ
(2011/9/25)
クリント・イーストウッド監督・製作・主演作品。
若い頃に戦争で朝鮮の人々を殺め、老齢になり妻に先立たれたアメリカ人の頑固じいさんウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)と彼の隣に住むモン族の少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)の話。
グラン・トリノは、主人公が所有する車。フォードの車は古きアメリカの象徴か。
タオ少年はコワルスキーの導きによって成長し、コワルスキーはタオ少年との触れあいを通じて後悔だけを引きずって生きた人生に一筋の光を見つける。
ストーリーはシンプルだが(だからこそか)非常に感動した。生と死、生きることとは何か、が描かれている。
インビクタス 負けざる者たち
(2011/10/29)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。
実話に基づいた南アフリカのラグビーW杯の話。南アフリカ初の黒人大統領ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)の哲学や彼が目指す民族・人種の融和が描かれる。
話が壮大すぎて、マンデラやラグビーチーム(スプリングボクス)のキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)等一人ひとりの心情や過去の細かいところまで描かれていなかったことだけが少し残念。
だが、素晴らしい作品。
マット・デイモン、ガタイ良すぎ。
マディソン郡の橋
(2012/8/22)
クリント・イーストウッド監督・主演作品。
人生で最も愛せる相手を見つけた男女の物語。
アメリカ映画にはこの作品のように、現在の視点から過去を振り返って――その回想の大半は両親あるいは祖父母のものだ――、ラストではその回想が現在の人々――大半は息子や娘たち――に影響を与える、といった構成が多い気がする。
が、当作品は素晴らしい作品。
イーストウッドは勿論、家族への愛情と主人公への恋情で揺れる女性フランチェスカ(メリル・ストリープ)の演技も凄い。
チェンジリング
(2012/11/3)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。主演はアンジェリーナ・ジョリー。
1928年、ロサンゼルスで起きた実際の事件が基になっているらしい。
主演のアンジェリーナ・ジョリーの演技が、心のうちに秘めた強い意志があるって感じがして良かった。
凄惨な事件、暗く悲しいストーリーだが、重々しくもどこかに救いがあるとも表現しすぎず、淡々とした作品に仕上げているのは流石。
ミスティック・リバー
(2013/1/31)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。
ジミー、ショーン、デイヴ、幼い彼らはある日、事件にまきこまれる。そしてデイヴだけが悲劇の標的となり、「少年デイヴ」の心は森の中に置かれたままとなってしまう。下水溝に落ちた野球やホッケーのボールのように。
悲しみや苦しみ、「負の連鎖」はどうなる――それ以上の物語が描かれている。
闇にとりこまれたデイヴの心、ケイティの死に対する哀しみ、暗闇・影の描写が絶妙な効果となっている。
イーストウッド監督がこれほどに深い人間ドラマをつくりあげてくれたことに、感謝。
パーフェクト・ワールド
(2013/3/3)
クリント・イーストウッド監督・出演作品。主演はケビン・コスナー。
脱走囚のブッチ(ケビン・コスナー)と彼の人質になった少年フィリップ(”バズ”)の逃避行。奇妙な設定・組み合わせの二人。なのに、すんなりと見られるのは「悪人」ブッチがフィリップにだけは彼の心根を見せているからだろう。
服装から仕種、台詞や行動に至るまで、ブッチのキャラクターとケビン・コスナーの演技はズルいほどにクール。
ミリオンダラー・ベイビー
(2013/4/25)
クリント・イーストウッド監督・製作・主演作品。
老トレーナーのフランキー(クリント・イーストウッド)と彼のパートナー、三十才を過ぎた女ボクサー(ヒラリー・スワンク)の静かだが力強い物語。
特別に盛りあげることはないが、温かいシーンが――射精は決してしないが、キモチいいときを持続させ続けるような(って、何で性行為に例えているんだ俺は)――見ていて心地よい。
チャンピオンに挑戦した試合途中のアクシデントにより、女の身体はマヒしてしまう。勝利と絆を積み重ねていた物語は一転して憂鬱になる。
モ・クシュラ。
チャンピオンへの挑戦試合でフランキーがボクサーに贈ったガウンに書かれた言葉。モ・クシュラとはゲール語で「私の愛する人、私の血」の意であることをフランキーは彼女に告げる。
死を望んだ女を、最終的に男は殺す。死に導く。強烈、だ。
ラストシーン、くもりガラスの向こうでレモンパイを頼んだ男の表情が映ることはなかった。
スペース・カウボーイ
(2013/7/11)
クリント・イーストウッド監督・製作・主演作品。
かつて宇宙を夢みた若者たち、が40年のときを経て(老人として)宇宙へ行く。
宇宙のシーンはCG。
老人が宇宙へ行くことは(現代ではまだ)不可能、な面を強調して宇宙(ロケット)のシーンを削っても良かったように思う。なので、ホーク(トミー・リー・ジョーンズ)一人が月へ残る(向かう)選択をする場面が大げさすぎて若干感動を削がれた。
でも、作品としては十分に面白い。
ラストで流れる「フライ・ミ―・トゥ・ザ・ムーン」が良い。
荒野のストレンジャー
(2013/8/5)
クリント・イーストウッド監督・主演作品。
とある小さな町に主人公は流れ者としてたどり着く。西部劇らしく、主人公は言葉少な。撃ちたい奴に撃ち、酒を飲み女を抱く。嫌がる素振りの女を無理矢理抱いて納得(満足?)させる主人公。だが彼は単なるマッチョな男ではなく、静かでしかしタフな印象を感じさせる。
アクションシーンがもっと多くても良かったと思う。
主人公につき従う小人の男が印象に残る。
ペイルライダー
(2013/9/20)
クリント・イーストウッド監督・製作・主演作品。
砂金を採掘する自然豊かな村が権力者の支配する町の人間に襲われてしまう。流れ者としてたどり着いた牧師(イーストウッド)が、救う。
寡黙で陰のあるヒーローを演じたら、イーストウッドの右に出る者はいない。
また、この作品で秀逸なのは村のある一家の人たちが信仰を持っており、流れ者であるイーストウッドが牧師という設定だろう。
”教え”がある。
アウトロー
(2013/10/15)
クリント・イーストウッド監督・主演作品。
南北戦争中、家族を殺されたジョージ―・ウェールズ(クリント・イーストウッド)。戦争が終わっても北軍につかない彼は逃亡。追手から逃れつつ、ジョージ―は家族のような関係を築いていく。
イーストウッドは、疑似的な家族関係を常にテーマとしている(とりわけ、父と子の関係は様々な作品で強調される)。
ツバを吐く無法者が主人公の本作は、義理が色濃く表現されている。
J・エドガー
(2014/4/5)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。FBI初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーをレオナルド・ディカプリオが演じる。
冒頭、共産(党)主義の危険人物たちを次々と捕え、国外追放させるエドガー。
彼は正義を貫き通した、又FBIという組織をつくりあげた人物だが、正義や信念を貫き通すというのは、共産主義者やキング牧師(=エドガーが敵と考える者たち)と似たような姿に見えた。
J・エドガーは悪と正義の区別を明確にしたが、彼の権力は最終的に墜落してしまった。
硫黄島からの手紙
(2014/5/4)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。
出演は渡辺謙や二宮和也などの日本人俳優、イーストウッドが撮った日本軍目線の戦争映画。
アメリカ人が監督。なのに感動できるのは「アメリカ人だから」とかそういう感情がムダだということを悟らせる。
(もしもイーストウッドが和名になったら、東木さんもしくは東森さんとなるのだろうか?)
戦争の大義を重んじている者は主演陣にいない。家族を想い、たとえ醜くとも生きのびること、それこそが彼らの目的である。
二宮和也や渡辺謙が演じた男たちはとても日本人らしく、そして人間らしい。
父親たちの星条旗
(2014/5/4)
クリント・イーストウッド監督・製作作品。
星条旗を掲げた者たち――戦勝国であるアメリカの物語。
英雄として祖国へ帰った男たち。だが彼らへの待遇は、彼らが米国のために戦争に行ったことを忘れさせ、(アメリカ特有の)個人の利益を求める者たちの歓迎であった。
終盤、彼らは友人――戦友――のために戦ったと語られるが……(戦後に生きる私たちの目線では)戦争にはもはや大義など存在しなかったのではないか、そう思ってしまう。
「衛生兵!」の声が木霊する。
恐怖のメロディ
(2020/10/23)
クリント・イーストウッド監督・主演作品。イーストウッドの初監督作品。
イーストウッドは『グラン・トリノ』などもそうだが、割と単純な話をキャラクターの強さとあわせて一つの作品にできるのが良い。