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【映画】伊丹十三監督作品 の感想

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以下、過去の記述より。
カッコ内は私が見た日付になります。

ミンボーの女

(2013/1/14)
「ミンボー」とは民事介入暴力、ヤクザによるゆすりや脅しのこと。

主人公の井上まひる(宮本信子)は「ミンボー」専門の弁護士。
だから「ミンボーの女」。
この作品は”伊丹式ヤクザ映画”らしい。

小学生の頃にTVで『マルサの女』とかやっていたが、ちゃんと伊丹作品を観るのは初。
で、この”伊丹式”がメチャメチャ良い。
退屈させない――どころか面白いストーリー、台詞のテンポ、ギャグ、演技などなど素晴らしい。

井上まひるはヤクザに屈しない女だが、彼女の表情や話し方に彼女の背景や決意を感じさせる。

マルサの女

(2013/1/19)
国税局の査察官、通称”〇査”の女。

主人公のイタクラリョウコ(宮本信子)は作品前半ではまだマルサでなく、税務署に勤務している。
作品の要素のひとつに、主人公の成長物語、がある。

『ミンボーの女』もそうだが、これらの作品が面白いのは、暴力や刑事事件のように単純な善悪でなく、人間社会の中――両作品とも、主人公の登場シーンでは、主人公は「眺める」行為をしている――で正義と悪(あるいは公と民とか、男と女とか)を描いているからだろう。

山崎努の演技が素晴らしい。
有名なテーマ曲も、合っている。

マルサの女2

(2013/1/19)
マルサとして成長したイタクラリョウコ(宮本信子)――今(※当時)Wikiで調べたら予想通りやっぱり伊丹十三の嫁さんだった――、本作では悪徳の宗教法人と地上げ屋にメスを入れる。

悪者は三國連太郎。
1の山崎努と同様、素晴らしい人物を据えている。

この作品群の悪者たちは、カネ、に憑かれた病人でもある、と思う。

これだけのカット、多人数のキャストを使っている、ことだけでも凄い。
2が悪くなっていない、好例だ。

マルタイの女

(2013/1/20)
カルト教団「心理の羊」の弁護士殺害事件に遭遇した主人公の磯野ビワコ(宮本信子)。
女優のビワコは事件の証人として身辺警護を受けることに。
(身辺警護)対象人のビワコ、通称マルタイのB。

これだけ内容の濃い作品、スリラーとしてつくることも可能だろうが、エンターテインメント大作として仕上げている点に関心。

というか、学会やオウム等、日本社会にメスを(深々と!)入れすぎ。
凄い。

西村雅彦(※現在は西村まさ彦)演じる刑事が(二度目に)ビワコを守るシーンに感動。
涙。

現実と虚構、事実と演技、リアルとフィクション――が入り混じるつくりも良い。

スーパーの女

(2013/1/24)
潰れかけのスーパー「正直屋」再建の物語。
ストーリーが微妙で、「女」シリーズでは一番つまらない作品。

職人ではなく(スーパーには)技術者が必要、リパック等の悪習をなくす、消費者サービスを最優先などなど、先見性はあった。

宮本信子は作品ごとに異なる表情、キャラクターをみせる女優。

あげまん

(2013/1/27)
主人公ナヨコ(宮本信子)は、男の運を上昇させる女。
だから「あげまん」。

「7月4日に捨てられていたので、ナヨコと名付けた」
に代表される、ネーミングが良い(これは伊丹十三の他作品も)。
シンプルだが印象的、鈴木主水(モンド)って!

作品内では権力のある人間とカネを、クソのように扱っている。
10億円をポンと出すかわりに、ナヨコと主水は本当の幸せを手に入れた。

お葬式

(2013/2/2)
伊丹十三の第一回監督作品は30年ちかく前の映画。
だから、主演の山崎努が若い。若々しい。

じいちゃんの突然死、からの通夜や葬式、火葬。
それら儀式を通して雨宮一族、家族、夫婦の結びつきが強まっていく。

故人の死や儀式を単なる「かたち」としてしか考えていなかった主人公夫婦は、弔うことやこれからの人生、パートナーに対しての思いを深めていく。

時々入るアーティスティックなカット、例えば坊さんが経を詠んでいるときのスピーカーコードを暗闇の中カメラが追っていくカットなんかは――ストーリーが良いのだから――不要では、と感じた。

山崎努が愛人と森の中でセックスしている間に、婦人(宮本信子)がブランコをひたすら横に揺らしているシーンは良かった。

黒沢清が出演していた。

大病人

(2013/2/10)
余命一年の主人公(三國連太郎)。

作中、医師(津川雅彦)から余命を聞きだし、主人公が身体中震えてしまうシーン、自殺を図り黄泉をさまようシーン、般若心経とオーケストラとの交響シーンが印象的。

「ラストダンス」のくだりをラストシーンに持ってくるのは、ずるい。
泣いてしまう。

静かな生活

(2013/2/11)
原作は大江健三郎の同名小説。

障がい児のイーヨー(渡部篤郎)と妹のマーチャン(佐伯日菜子)の生活。
宮本信子は大江健三郎(山崎努)の嫁ではない別の役だった、さすがに。

イーヨーが20mプールを泳ぎきったことに、こんなに感動してしまうのは何故だろう。
彼が、健気にうつるからか?
それも一理ある。
が、イーヨーが限りなく無垢な存在だから、ってのが大きいと思う。

音楽は大江光。
心地よい音の並びは、イーヨー本人が作曲したものだ。

タンポポ

(2013/2/21)
(DVD特典の)予告篇にあるように「これはラーメン・ウエスタン」だ。

主人公のゴロー(山崎努)やタンポポ(宮本信子)、ガン(渡辺謙)にピスケン(安岡力也)にセンセイ(加藤嘉)たちは、アンダークラスの人間だ(センセイは、乞食だ)。

そんなことに関係なく、この作品には人生の要素が(決して「全て」ではないが)様々につまっている。
人情や努力、義理や友情、男気、等々。

だから、何てことないシーンで、観る者を”ふっ”と感動させる。
これほど温かい映画は(多分)あまりない。

ラーメン屋の再建に向かい、一丸となって努力する姿勢が――ゴローやタンポポが所謂「下流」なだけに――心を打つ。

主人公ゴロー、ハードボイルドすぎる。

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