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【本】町田康『宿屋めぐり』感想

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以下、過去の記述より。
カッコ内は自分が読み終えた日付になります。

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■町田康『宿屋めぐり』(2012/11/3)
736頁、凄まじい小説。

主役の鋤名彦名は突然くにゅくにゅの皮に飲みこまれ、贋の世界(曰く「嘘の世界」)で道中するハメに。
主役の名は日本神話に登場する「スクナノミコト」に由来するそう。

彦名は贋の世界でのあらゆる出来事(数多の試練や彼の能力開眼等)を「主」が与えたものだと信じて生きる。
自身の欲求などは考えない、「主」の導き・命令。
戯言ばかり述べる悪人の登場・跋扈、「主」が与えた試練。と。
「主」の命である大刀奉納だけが本当の世界に戻れる唯一の行動であると信じこみながら。

が、終盤ヌヌヌノ王子に指摘される通り、彦名の言葉は――彼の主語がコロコロと変化すること等を筆頭に――全く一貫していない。
また、指名手配の極悪人から偽名の別人へ、王裂では超能力者として芸人に、やがてルンを救う運命の男へ、果ては彦名の肉体はおばはんの肉体と入れ替わる。

主役の鋤名彦名という存在は、言葉も姿形も「めぐっていく」存在だ。
最後に彦名の前に現れる「主」にも「お前は次から次へと宿屋をめぐり続けるしかない」と言われてしまう。
この「主」、解説(※注:文庫版です)の笙野頼子は「この作品は、筆者の介入を許していない」って言っているが、絶対的存在となっている「主」には、筆者(町田康自身)の介入も含まれているのでは――と、俺は思った。
「主」対 彦名の図は、メタフィクションのようでもある、って。

兎に角、著者独特の言葉づかいやギャグも沢山つめられたこの作品は、素晴らしい。

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