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【コラム 父親】ブタキム♪ブタキム♪

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この世には2種類の人間がいる。
という言い方で何もかもを当てはめるのは、果たしてずるいかどうか。
(「俺か、俺以外か」と語るローランドさんも、活用なさっている。)

この世には2種類の人間がいる。
父親が酔っぱらう姿を見た人間と見ていない人間である。

~~~~~
飲み会の帰り道、自宅の最寄駅付近で、酩酊状態の父親と遭遇した。
少し前方を千鳥足で歩く父親を見て、私の酔いはだいぶ醒めた。

信号のところで、父親に追いついたので声をかける。
「お父さん、大丈夫?」
大丈夫、の前に本当は「だいぶ酔ってるみたいだけど」とつけたかったが、怒りを買ったら面倒なので簡潔に尋ねた。
父「おん。ぜんぜん!全然だいじょうぶっ!」
ゆで蛸のような顔色の父親は、陽気に応えた。

信号を渡ると、コンビニがある。
父「俺、ちょっと!ちょっとコンビニ寄ってくわ!」
けっこう酔っているように感じたが、こちらの質問に応えて会話もできているし、大丈夫だろうと思い、私は先に家へ向かった。
これがだいたい、深夜0時ごろ。

それから1時間が経過しても、父親は自宅に帰ってこなかった。
コンビニからは歩いて5分もかからない。
心配になった私は、コンビニへと向かった。

私と出会って1時間後、父親はまだコンビニにいた。
正確には、コンビニの前に座っていた。

コンビニの入口付近に座り込み、父親はカップラーメンを啜っていた。
目映い光。胡坐で座る父親。スーパーカップから立ち昇る湯気。
家での父親は、割と寡黙で厳格な人だった。
決して嫌い・苦手なわけではなかったが、私にとって、気軽に話しかけたりできるような存在ではなかった。父を少し畏れていたというのが、適切な言い方かもしれない。

そんな父親が、暗夜堂々――そんな言葉があるかは知らないが――とコンビニの真ん前で座り込んでカップラーメンを食べている。
何だか、いけないものを見てしまった気持ちにもなる。

「遅いから、心配になって来たよ」と私。
「おん。ぜんぜん!全然だいじょうぶっ! これ食ったら、帰るから!」と父。

私は先に自宅へと戻り、少したってから父親も帰ってきた。
父親は帰るとすぐに、寝室へと入っていった。
~~~~~

時々、コンビニの前でカップラーメンをかっ食らっていた父親の姿を思い出す。
そのとき何故か、胡坐をかいて座る父親を神様や仏様と重ねてしまうことがある。
(コンビニの眩しい光が、後光になっているのかもしれない)

――この世には2種類の人間がいる。
父親の酔っぱらう姿を見た人間に、私はなった。

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