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【コラム 入学式】スーツの丈と思いの丈

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「大学の入学式当日でした。買ったばかりのスーツのスラックスに足を通していったんです。そうしたら……あれ? なんか変だなって。違和感の正体は、スラックスの丈の短さでした。ヒザが隠れるぐらいの長さしかないんですよ」

そう語るのは、川崎市在住のmrsugarさん(34)。初めて買って着たスーツの裾上げにおける失敗を語ることで、同じような被害にあう人を減らそうと活動する一人である。

――入学式当日にスラックスの丈が短すぎるのが判明したそうですが、試着はしなかったのでしょうか?

「できあがったスーツをお店で受け取ってから入学式本番まで、一度も着なかったんです。あの頃に戻れるなら自分に言ってやりたいですね、『お前のそれ、つんつるてんだからな!一回着て確認しといたほうがいいぞ』って(笑)」

――入学式には、つんつるてんのスラックスで参加されたのですか?

「まさか(笑)あんな半ズボンみたいなスラックスで行けませんよ!あれを着て行けるとしたら、霜降り明星のせいやさんかBEAMSみたいなセレクトショップの店員さんくらいじゃないですか? あれをオシャレに着こなせるのは」

――別の服装にされたのでしょうか?

「仕方がないので、兄のスーツを借りました。最初はスラックスだけ借りようとしたんですが、私のスーツはストライプ柄、兄のは無地だったので、もうジャケットも丸ごと兄のスーツに変更しよう、と。兄は私より体型が大きいので、借りたスーツもブカブカではあったんですが。半ズボンよりはマシかなって(笑)」

――そもそもスラックスの丈が短くなったのはどうしてでしょうか?

「私にもわかりません。お店で買うときに『裾上げは何センチでここまで』って、店員さんと確認したんですけど……。お店の側が、発注時の数字を間違えて書いてしまった、とかじゃないかなあ。でも、裾上げの作業する人は作業前に何も思わなかったんですかね。こんなに裾上げたら、もはや半ズボンになるぞって(笑)」

――丈の違ったスーツはその後、どうされたのでしょうか?

「入学式の帰りに直接、買ったお店に持っていきました。いま考えればカバンに入れて入学式に持っていかなくてもって思いますが……やっぱり親が買ってくれた初めてのスーツでしたからね。それを着て入学式出るぞ!ってなってただけに、どうしても持って行きたかったんですかね」

――お店の反応はいかがでしたか?

「『申し訳ありませんでした』とのことでした。別にこっちも『せっかくの入学式が、あんたんとこのスーツが……スラックスの丈がつんつるてんだったせいで台無しだよ!』なんて言いませんので、軽くお詫びされた程度でした」

――短すぎるスラックスは?

「適切な長さのものに交換していただきました。後日もう一度お店に行って交換されたスーツを受け取って……だから、初めてのスーツをきちんと着たのは成人式になってしまいましたね。あ、ごめんなさい嘘です!交換されたスーツはお店で受け取るときに試着しました。『よし、短くないぞ』って、お店の中で確認しました」

――お店への怒りはないのでしょうか?

「今となっては別に、何もありません。16年も前のことですからね。当時? 当時は怒りもありましたかね。スラックスが短すぎるのがわかって、家の中でバタバタして、何とか間に合った入学式が終わるくらいまでは、ひたすらスーツ屋を恨んでいたと思います。『俺の怒りで、その青の字を赤色に変えてやろうか』なんて思っていました。……でも、その後も別に、そのお店でスーツを買っていますので、今ではホント、少しも恨んだりとかは、ないです。はい」

――最後に、この春に入学式を迎える方々へ向けて、メッセージをお願いします。

「私から言えるのはホント一言だけです。『買ったスーツは入学式より前の日に、一回着ておいてください』と。世の中は不安定な状況が続いていますが、新たな学校や環境に進まれる方が、ご自身に合ったサイズの服でスタートできることをお祈りしています」

インタビュー当日、mrsugarさんはきちんと丈の合ったスラックスを着用されていた。
「晴れの日に残念な気分になってしまう若者を減らしたい」短すぎたスラックスの丈について話をする彼の思いの丈は、決して寸足らずではなかった。

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