以下、過去の記述より。
カッコ内は私が読み終わった日付です。
※ネタバレを含みますのでお気をつけください。
中井英夫『虚無への供物』(上)
(2018/4/18)
以前、兄から(新装版でない)文庫を借りて読んだ作品。再読。推理小説の墓碑銘とまで絶賛された作品。
氷沼家の人間が不可解な死を遂げる事件、ゲイバアから始まる物語。
奈々村久生(女性)や光田亜利夫(アリョーシャ)といったキャラクターの名前など、面白い要素ばかりがつまっている。
名探偵(牟礼田俊夫)の不在、男性と女性(助手と探偵)、事件前からの予言――この作品では全てが”あべこべ”だ。
中井英夫『虚無への供物』(下)
(2018/5/31)
日本探偵小説史上の三大奇書と呼ばれるもののひとつ。
物語と現実、(現実の)書物と作中物語とが入り混じる。終章の座談会めいた内容も含めてヤバい。
そしてひたすらに面白い。
鴻巣玄次というキャラクターは、何故か『名探偵コナン』の”黒い”犯人を想像してしまう。
藍ちゃんと紅司は現実世界の中での非現実(ゲイバア)や幻想に自身の居場所を見つけられたが(藍ちゃんはラストで恋人との関係も描かれていて、立派に生きている)、蒼司だけは現実があまりにも――自分の(望む)世界と――違っていて、道を外してしまう。
道を外すことでしか、自身を保てず、生きていられなくなってしまう。