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【映画】今村昌平監督作品の感想

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今村昌平監督はカンヌ国際映画祭で二度のグランプリに輝いたとても偉大な映画監督です。神奈川県川崎市にある日本映画学校(現:日本映画大学)の創設者でもあります。

以下、過去の記述より。
カッコ内は私が見た日付です。

楢山節考

(2012/12/6)
深沢七郎原作の姥捨ての物語。カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した作品。

その場所では、人が一人増えれば一人減る。減らされる。70歳になった老人は「山」へ行く。

山行きを決意した主人公・辰平(緒形拳)の母親おりん(坂本スミ子)は、山に置かれた時点から、人間を越えた崇高な存在となっていた。

挿入される動物描写が良い。

豚と軍艦

(2012/12/9)
1961年の作品、50年以上昔のモノクロ作品だが楽しめた。

物語の軸となるのは、ヤクザの舎弟である欣太(長門裕之)と恋人の春子(吉村実子)の愛。

誰もが際限ない欲を抱き、その欲は当然「社会の上のほう」から成されていく(だから、欣太や春子の欲――あるいは夢――は簡単に踏みにじられる)。

「重喜劇」らしく、内容はかなりヘビーで、哀しい。

女衒 ZEGEN

(2012/12/16)
女衒となり経済を発展させていく男、実在した村岡伊平治を緒形拳が演じて彼の生涯を描く。明治後半から昭和戦争までの時代劇。

日本(天皇陛下)を大義として生きる伊平治と彼の妻しほ(倍賞美津子)。

女の身体、セックス、金、権力等々、作品では全てを――フンドシのように――「物」として描く。

だが、伊平治の大義と、しほの彼を思う心だけは「物」ではなく絶対に譲られない大切な何かを孕んでいる(明治天皇崩御の際、伊平治は切腹に失敗するが)。

作品の後半、金を失った夫婦は決断を迫られる。しほは大切な心情のため、自身を「物」にする。真に強い女を演じた、倍賞美津子の演技が素晴らしい。

テンポが良く、ギャグも多く面白い。
老いてまで大義を貫く伊平治の姿は、見ている者に恐怖を与える。

カンゾー先生

(2012/12/23)
戦争中、何でもかんでも「肝臓炎」と診断する主人公の赤木風雨(柄本明)はみんなから「カンゾー先生」と呼ばれ、町を走る。

喜劇とされる作品だが、作中の狂気の描き方が尋常ではない。モルヒネ中毒の医者(自身の欲望を拡大しすぎた者)、軍人(他者の欲求をおさえつけ、自分たちの枠で物事を判断する者)等々、迫真の演技・演出を見せつけられる。

柄本明が演じるカンゾー先生も一時狂気に駆られるが(「肝臓炎撲滅」のスローガンが肥大してしまって)、彼のもとで働くソノ子(麻生久美子)と急患によって、本来あるべき自身の姿を取り戻す。

ソノ子は、本当に強い女。自分があるべき姿・得るべき物/者に一直線。麻生久美子は美しい。

原作は坂口安吾の『肝臓先生』。
ジャズマン山下洋輔の音楽が良い。

この映画では「肝臓(炎)」というのが非常に大きな意味を持っている。

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