サッカーで大きな感動をおぼえた試合がある。
2009年5月24日のプレミアリーグ最終節、ハル・シティ対マンチェスターUのゲーム。
大学を卒業するも就職せず、飲食店での深夜バイトを続ける私は、ぬる~い生活をおくっていた。
読書、音楽、映画、麻雀、サッカー(フットサル)、アルバイト――それにお酒を加えると、当時の私の生活になる。
当時、NHKのBSでは深夜1時~3時に毎日のようにサッカーが放送されていた。
イングランドのプレミアリーグ。
スペイン・ドイツ・イタリア・イングランドがサッカーの4大リーグと言われるが、そのころはイングランドのプレミアリーグが実力・人気ともに他のリーグより抜きんでていた。
アルバイトの無い日は、酒を片手にプレミアリーグの放送を見て、少しだらだらしてから寝るのが習慣だった。
その日は、イングランド プレミアリーグ2008-2009シーズンの最終節が放送された。
プレミアリーグの中でも随一のチーム、マンチェスター・ユナイテッド。ユニホームの色から、赤い悪魔などとも呼ばれる。
(ウェイン・ルーニーは現代フットボールを完璧に体現していたと思う。先ごろ引退のニュースをネットで見たが、監督専任になってもがんばってもらいたい!)
対するは2008-2009シーズンに初めてトップリーグであるプレミアリーグに昇格したハル・シティ。オレンジが映えるユニホームが印象的だ。
正直、試合の内容はあまりおぼえていない。
0-1でマンUが勝ったのだが、チャンピオンズリーグの決勝戦を控えているマンUは、名前も知らない選手ばかり出ていて、好ゲームと言える試合でもなかった。
感動したのは、試合終了直後だった。
この日、ハル・シティはプレミアリーグの残留がかかっていた。
マンUとの試合には負けるも、他会場での試合結果により、ハル・シティはプレミアリーグの残留が決定した。
残留が決まった瞬間、ハルのサポーターが大勢グラウンドに走りこんでいく。
次々と乱入するサポーター。ハルの選手たちは、そのサポーターたちと抱き合いプレミアリーグ残留の喜びを分かち合っている。
20チーム中の17位。この成績は決して良いものではない。
シーズンを通して大幅に負け越しているし、最終節のその日もホーム戦で(まだ年若いマンUの2軍選手たちを相手に)負けている。
長年、2部や3部のリーグ(日本で言えばJ2やJ3)で戦ってきたハル。
それを必死に応援してきたサポーターは、初めてプレミアリーグというトップオブザトップのリーグで戦う選手たちに多くの夢をもらっていたのだろう。
テレビ画面では、ハルのサポーターと選手が入り乱れて、喜びを爆発させている。
降格争いせざるを得ないチームは、負け組なのだろう。
その負け組たちが、グラウンドで無邪気に喜びあう姿に、無為な日々を過ごしていた私の心はふるえた。
酒と泪とハルのサポーター。