田村隆一は詩人です。
元々読まれていないブログで、全然読まれていないだろう現代詩の、それも独りよがりな感想を書いたのなら、それはもっともっと読まれないのでしょう。
以下、過去の記述より。
カッコの日付は私が読んだ日にちです。
『詩集 狐の手袋』
(2012/2/2)
難しい言葉が並んでいる訳ではないのに、深い。
美しく、汚く、古くあるいは新しく、生々しい、深層のコトバ。
「生々しい」と書いたが、それはこの作品が身体の部位ごとの章から成っているせいもあろう。
「鼻」のはじめ、「ぼくの聖灰水曜日」に描かれるヴァンパイアと聖少女が美しい。
「永遠」を生きる者を見つめる、「永遠」から逃走する著者のコトバ。
時間は永遠に不可逆、だろう。
(2012/2/23)
再読。
人間の身体部位ごとの章から成るこの作品、一つ一つの章は勿論、はじめの「舌」から最終の「声」「影」へ進むにつれて、一人の人間が、人間による社会が、各々の部位が掬いとり言語による世界が構成されている。
※注:過去の自分、何を書いているかよくわかりませんね。
「影」の一節――”人のなかには人はいない”――が、俺の中にぼんやりと残っている。
『ハミングバード』
(2012/2/28)
美しいもの、明るい言葉、が必ずしも並んでいる訳ではない。
著者という人間――「人間の内部には人間がいない」人間――の眼を血液を窓を脈をやがて口を言葉を…と(決して眼では捉えることのできない光のように)巡ったうえでの言葉が「白紙」の上に現れている。
Wikipediaによれば、「ハミングバード」(Humming Bird)は、ハチドリの英語名。
小さな、小さな鳥。
(2012/3/4)
再読。
いつどこで生まれるかわからない詩というもの――ただし、それが言葉となって形成されることは明らかだ――、その詩に関する詩が生まれてしまうというのは、著者が詩人である証だろう。
ハチドリの声はハチドリの中のハチドリから生まれているが、人間の声=言葉はどこから生まれているのか、何だかよくわからないが為に「白紙」の前で待っているのだろうか。
「雪は汚れていた」という詩が何故か印象深い。
雪の色を、想像してみる。
『灰色のノート』
(2012/3/18)
詩人の著者は、地球が生まれる以前や古代ギリシャ、第一次世界大戦などの過去へ一瞬のうちに飛んでいってしまうことに驚愕。
そんな凄い”ワープ”ができるのに、闇夜のように孤独で光を(あるいは影を?)求める姿に心が動かされる。
「灰」、(様々な)「色彩」、「光」、「音」など景色を想起させる言葉が目立つ。
あと、ウイスキー(酒)。
著者の写真が、年代別に数点挿入されている。
(2012/3/22)
再読。
死者を想う言葉、死者へ手向けの言葉、(「生者」の著者と)死者が戯れる言葉――生きながらにして死者と結束してしまえることに関心。
”秋霖”が読めない。
『生きる歓び』
(2012/3/25)
四季の移ろい、それぞれの季節の自然や生物、光の感受に関する詩が多い。
あと、江戸下町や「ブンカジン」のいる鎌倉など土地に関する作品。
主観を確信しつつ、死人を眺めるような客観性を常に維持している――そんな印象。
「その人は動かない頬に数滴の涙を落し」、悲しく美しい。
(2012/4/1)
著者が慣れ親しんだ土地なのだろう、鎌倉あたりの海や白い波頭、江ノ電の描写が素晴らしい。
「言葉が文字になり その文字が星の光になる」
、その真意が全く解せない。
(自分が)阿呆のため、感受性が低いため。
『インド酔夢行』
(2012/7/26)
詩人による、1970年代のインド(とネパール)紀行文。
「酔夢行」との題名だが、決して酩酊している訳ではなく、そのインドという土地を またそこに生きる人々を、BCとACが混ざりあう世界そのものを旅する行為が、「酔夢行」(著者はたしかにウイスキーやらワインを飲んでばかりいるが)。
詩人の著者らしく、そこを”みる目”が素晴らしい。
とりわけ、色彩や土の描写など。
BCとADが交錯する地で――盲目の少女を通して――著者は「永遠」を見ている。
詩人のノート
(2012/8/25)
自作や他者の詩を導入し、そこから著者の日々を、四季折々の鎌倉の景色を描いていくエッセイ。
日常を通して、酒を通して、(インドやネパールなどの)旅を通して、著者の詩に対する姿勢や想いが語られていく。
著者が散文詩というスタイルになったことに関する文章は、興味深く読むことができた。
「狐」のことば。
ぼくの人生案内
(2012/11/8)
詩人の著者が読者からの質問に答えていくエッセイ集。
けっこう古いときの作品なので、質問・回答ともに現代とのズレがある。
この本を読んで一番良かったことは、詩「帰途」が読めたことだ。
「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」の有名な詩。
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現代詩 is not dead.