≪舞台：ラーメン屋「小池」開店前の朝礼≫
≪登場人物：店長、店員A、店員B、店員C≫
【パターン①：普通の朝礼編】
〇開店前の店内 朝礼が始まる
店長「はい。皆さんおはようございます」
一同「おはようございます」
店長「えー、いよいよ、1ヶ月前にウチの店が撮影された番組『神宮寺シンイチのラーメン散歩』。その放送が3日後となりました」
店員A「3日後ですかー。いよいよですね」
店員B「やっぱテレビに出たら、行列とかできたりするんですかね」
店員C「…………………」
店長「神宮寺さんの番組は長く続いてる番組だし、テレビに出る反響はあると思います」
店員A「おー、いきなり大混雑しちゃうんだろうなー」
店員B「テレビ見て、俺のファンの子とか来ちゃったりして」
店員C「…………………」
店長（喜びを隠せない）「過度に期待しすぎるのはアレですが…」
店員A「店長、そんなこと言ってー」
店員B「なっがい行列できるの、期待してますよねー」
店員C「…………………」
店長「まぁたしかに、テレビ放送による人気には備えておく必要があります。せっかくテレビを見て来てくださるお客様をがっかりさせてしまうことがないよう、気をつけていきましょう」
店員A「俺、いつも以上にテキパキ動かないと！」
店員B「行列って、横入りとかトラブル多そうだからなー。ちゃんと見て、声かけるようにしよう」
店員C「…………………」
店長（店員Cに向かって）「C君も、大丈夫かな？ テレビで人気になって店が混んでも、きちんと対応しましょうって話してるんだけど…」
店員C「……あのー」
店長「ん？ C君、どうした？」
店員C「……あの、3日後のテレビって、本当にちゃんと放送されるんでしょうか？」
店長「まぁ一応、テレビ局の人が放送の日付を教えてくれたから。放送されるんじゃないかな」
店員A「そうだよ。1ヶ月前の撮影、お前もいたよな？」
店員B「みんなで神宮寺さんとゲストの皆さんの接客したじゃねーか」
店員C「はい。そうなんですけど……。何だかいろいろ、考えてしまって……」
店長「いろいろ、って？」
店員C「あの……例えばテレビに映っちゃいけないモノが映っちゃってたりとか……」
店員A「ウチのラーメン屋に、そんなモノないだろー」
店員B「そうそう。仮に、もし仮にヤバいモノが映ってたとしても、テレビ局の人がちゃんと編集してくれるんだよ。そういうもんなんだよ」
店員C「ボクの腕のタトゥー、カメラに映ってないですかね……」
一同「タトゥー！？」
店長「C君、タトゥーいれてたの！？」
店員C「はい……両腕に、けっこうゴツイのがぎっしり……」
店員A「マジか。見た目に似合わないことしてるなー」
店員B「まあ、でも！でもウチの店はロンTでやってるから。別に腕まくりしてたとかじゃないんだよな！」
店員C「はい。見せる系のタトゥーとかじゃないんで。信念的なやつなんで……」
店員C（ボソっと）「ってか、タトゥーがタブーな日本の風潮がおかしいんすけど……」
店員A（Bに向かって）「こいつ今、さりげなく主張いれてきたよな」
店員B（Aに向かって）「うん。しかもタトゥーとタブーで韻も踏んでた」
店長「えー、C君のタトゥーは正直、意外ではありましたが。テレビ局の人からは特に連絡ないので、大丈夫だと思います」
店員C「あの……テレビの放送が大丈夫かどうか、他にもあるんですけど……」
店長・店員A・Bモノローグ（まだあるのかよ……）
店長「他にって、どんなのかな？」
店員C「芸能人の方って、スキャンダルとか多いじゃないですか。ブンシュンホーとか。撮影に来た神宮寺さんとかゲストの人に、今日とか明日スキャンダルがあったとしたら……たぶん放送せずにお蔵入りですよね……」
店員A「それはそうかもしれないけど」
店員B「そんなの考えてたら、きりないって！ってか無いって、そんなこと。大丈夫だから！」
店員C「あと、もしも政治や外交に大きな動きがあったりして、速報のニュースによって放送が無くなるとか……」
店員A「まあ、そうかもしれないけども」
店員B「だから！そんなの考えてたらきりないって！大丈夫だから、な！」
店長「C君はいろいろと考えちゃうほうだからな。C君の言うこともたしかに一理あるかもしれませんが――はい！とにかく私たちはテレビ放送後の人気・混雑に備えて、がんばっていきましょー」
〇お店の電話が鳴る トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル……
店長「お電話ありがとうございます。ラーメン小池です」
電話の主「■■■■■■■」
店長「えっ！？」
電話の主「■■■■■■■」
店長「そんな……。どうにか、どうにかならないんでしょうか」
電話の主「■■■■■■■」
店長「あの！あの、どうか――」
〇電話が切られてしまう
店員A「店長、今の電話……」
店員B「何かあったんですか？」
店長「……1ヶ月前のテレビ撮影の日、店にいたらしい」
店員A「え？ 誰がですか？」
店長「ユーチューバーの暴麺フォーMENってヤツ。今の電話の主」
店員B「暴麺フォーMENって、人気ユーチューバーですよ。飲食店の不正を暴くとか言って、クレームまがいの動画あげてるヤツ」
店員A「そいつ、何て言ってたんですか？」
店長「神宮寺さんの番組が撮影に来た日、カウンターの席にいたらしいんだ」
店員C「……暴麺フォーMENが」
店長「うん。で、私たち店員が一般人の客をそっちのけにして、神宮寺さんたちばかり率先してサービスしてただろうって……」
店員A「そんなの。そんなの言いがかりじゃないですか」
店員B「そうだよ！ラーメン出す順番で、神宮寺さんたちを優先したわけでもないのに！」
店員C「で、暴麺フォーMENは？ 何て？」
店長「うん。追加でトッピングしようとして、何回も店員に声かけたのに無視されたって。【＃接客不良店員を告発】とか言ってて。その動画を今からユーチューブにアップするって……」
店員A「そんなの！お昼どきは混雑するから、お客さんの声が聞こえないこともあるって。言いがかりですよ！」
店員B「そうだよ！店長、警察に相談しましょうよ」
店長「せっかく。せっかくあと3日でテレビに出られるってときに……。一体どうしたら……」
〇再び店の電話が鳴る トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル……
店長（元気なく）「はい。ラーメン小池です……」
電話の主「■■■■■■■」
店長「えっ！？」
電話の主「■■■■■■■」
店長「そんな……ホントですか？ はい、お願いします！どうもありがとうございます！」
電話の主「■■■■■■■」
店長「どうぞよろしくお願いします！」
〇電話が切られる
店員C「また、暴麺フォーMEN、ですか？」
店長「いや。テレビ局の人」
店員A「えっ？ もしかして――」
店員B「もうユーチューブにあがったの見たのか……」
店員C「店長……3日後のテレビ放送、中止ですか？」
店長「いや、ドッキリだったらしい」
A・B・C「えっ？」
店長「最初の電話の、暴麺フォーMENの件はドッキリらしくて。で、実は今もテレビのカメラまわってるらしくて。テレビ局の人が、皆さんのドッキリの反応も含めて、テレビで放送させてくださいって」
A・B・C「えーーっっ！？」
〇暗転