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【コラム 牛丼屋】あの娘ぼくがお箸置いたらどんな風に運ぶだろう

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社会人になると学校では教わらなかったことに度々ぶつかる訳で。
よくある一つが牛丼チェーンで食べ終えた後の箸の置き方。これは学校では教えてくれない。
(何だか漫才の入りみたいだ)

牛丼を食べ終えてからの箸の置き方は、以下3つの選択肢がある。
①どんぶりの上(ふち部分)で平行に置く
②どんぶりの底に箸の先がくるよう、どんぶりの内側に立てかける
③お盆の上に置く

私は②派である。
①は渡し箸という自分の知るマナーに触れるため、③は使用して汚れた箸をお盆に置くのが店員さんに対してためらわれるため、という理由から。

ただし②の場合、どんぶりがそれほど深くないからか、店員さんが片づける際にどんぶりの中で立てかけた箸が落ちてしまうのではないか。(実際、あるチェーン店ではどんぶりが浅くて箸がほぼ横向きになってしまう)
そんな懸念をずっと抱いていた。
おそらくお盆も洗うのだから、③が正解なのでは――最近ではそう思うようにもなってきた。

先月、大手チェーン店で牛丼を食べたときのこと。
そのお店は温かいお茶を出してくれるタイプで(これでどの店かわかってしまうかもしれないが)、牛丼並盛を注文した私の前に女性の店員さんが湯呑みを差し出してくれた。

目の前に置かれた湯呑みをゆっくりと両手で包む。
私は末端冷え性のため、一年の7割は常に手足が冷たくなっている。
冷えきった手に熱を伝えてから、湯呑みを口元に持っていく。と、お茶がめちゃくちゃ熱い。ちょっとヤバいくらいの熱さ。一発で口内にやけどを負った。

やけどはしたが、別に店員さんが悪い訳ではない。熱さを確認しなかった自分のせいだと思っていると、間もなく牛丼が到着して食べ始める。
やけどにより、口の中にちょっとおかしな感覚が生じている。

食べ進めていると、お店が混んできたため厨房からカウンターへ二人目の店員が現れた。
新たな客が来て座り、湯呑みを差し出した二人目の店員さんはこう言った。
「こちらのお茶、とてもお熱くなっておりますので、お気をつけください」
たしかに熱かった。二人目の店員さん(多分ベテラン)は、湯呑みに触っただけで中のお茶の熱さがわかるのだろう。

すると、ベテラン店員がもう一人のカウンター店員である、私にお茶を出してくれた店員に告げた。
「このお茶、かなり熱くなってるから取り替えといて。危ないから。いま僕が出した人以外に、このお茶出したお客さんいないよね?」
若手店員「大丈夫です。いません」

(えっ? 目の前にいるやん。俺だよ俺。おかげで口内やけどしちゃったよ!)

若手店員「たしかに、これは熱いですね。中のお茶、取り替えときます」

私はいつからステルス能力を得ていたのだろう。
ついさっき注文をやり取りし、湯呑みと牛丼を提供してくれた店員さんの記憶から消されてしまう男。それが私。

変わりたい! 今すぐ、この家(という字の付くお店)から。
殻を破りたい。

私は自己革命を起こすべく、牛丼を食べ終えた箸を――どんぶりではなく!――お盆の上に置き、店を後にした。
口の中は、やけどしちったまま。

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