充電したばかりのスマートフォン。
100%だった充電は、すぐに減ります。
99%。
ホームドラマ『俺の家の話』最終話。
その展開は予想を裏切る、1%のお話でした。
※以下、ネタバレがありますので、お気をつけください。
●冒頭、火葬場から煙があがる描写。
(ああ、寿三郎(西田敏行)が亡くなったんだな。そう思いました)
●2022年1月15日(土)
観山家のいつもの食卓。
寿一(長瀬智也)が喋って、寿三郎が小言を言って。
O.S.D(ロバート秋山)がライムを刻んで。
食卓には、大きな松前漬けの桶が置かれていました。
●2022年1月16日(日)
能「隅田川」披露の日。
寿三郎は主役を演じる寿一がいないことに気がつきます。
寿一がいない。
寿一はどこだと皆に聞く寿三郎。
寿一を見つけられない寿三郎にさくらが言います。
「亡くなったの」
ぜあっ!え?
大晦日のプロレス。
ホセとの試合途中にスーパー世阿弥マシン(長瀬智也)は意識を失いました。
病院に搬送されましたが、そのまま帰らぬ人に……。
子どもが親を看取ること。
それが、その流れが当たり前だと思っていました。
今日明日、自分が死ぬことなんてない。
常に死を意識するなんて無理ですが、どこかにそれを置いておく。
置いておくというか、在る。
目前心後。
離見の見。
世阿弥の教えが重みを持って響きます。
●「隅田川」の舞台
「隅田川」は寿限無(桐谷健太)と秀生(羽村仁成)を中心に進んでいきます。
舞台という、生きた者だけが立てる・舞える場所。
常に誰かが動いたり謡ったり、演技をして台詞を発している場所。
舞台の端に座る寿三郎。
彼は舞台の外に立つ、寿一を見つけました。
寿一の亡霊。
亡霊の寿一。
舞台にいる寿三郎と外に立つ寿一。
本気の親子のやり取りは、思い出しただけで涙がこみあげてしまいます。
このシーンについてはもう「とにかく見て!」としか言えません。
人間国宝になれなくても、観山家の家宝となった寿一。
寿一は父親から初めて、ホメられました。
寿三郎「今まで俺が、お前を褒めなかったのは……褒めたら……終わっちゃうから。」
寿三郎の目にうつる寿一の亡霊が消え、舞台の謡だけが響きます。
(ラストに来て、介護を受ける側の寿三郎が想いをこめた言葉を息子に送るシーン。
亡霊を消す、終わらせるための言葉。
宮藤官九郎さんの離見の見っぷりにしびれました)
●舞台は続く
「隅田川」が終わっても、観山家の話は続きます。
跡継ぎ(二十八世観山流宗家)は寿一。
かつて寿三郎が書いた遺言を、寿一の墓前で広げるさくら(戸田恵梨香)。
突然、さくらの体が宙に浮きました。
スーパー世阿弥マシンの山賊抱っこ。
キス。
そんなさくらは、一年後に踊介(永山絢斗)と結婚。
(さくらの中で、寿一との思い出は残り続けているはずです)
寿一が亡くなった観山家。
二十八世観山家流宗家は、寿限無となりました。
寿一の子ども秀生は、公立中学校に進学。
寿限無の後に観山流宗家を継ぐのは、秀生になりそうです。
長女の舞(江口のりこ)は、秀生の学習をサポート。
舞の子ども大州(道枝駿佑)は、大学に進学するもデキ婚……波乱の人生を送ることに。
●追悼プロレス
スーパー世阿弥マシンの追悼プロレスが、さんたまプロレスで行われました。
さんたまプロレス。
若くして家を出た寿一に家族を教えてくれた場所です。
追悼プロレスの試合中、長州力はリングに寿一(スーパー世阿弥マシン)を見つけます。
で、寿一からリキにラリアット。
スーパー世阿弥マシンの亡霊による、もう一人の父親への最高の恩返しです。
観山寿一・スーパー世阿弥マシン(長瀬智也)は、最後まで皆に笑顔を与えてくれる、最高のヒーローでした。
出演者・制作陣の皆さま、素晴らしいホームドラマを見せていただき、ありがとうございました。